遺言で相続分なしの相続人 遺留分行使時の特別寄与料負担
被相続人Aは令和2年6月死亡、Aの相続人は、Aの子であるB及び相手方の2名であり、抗告人はBの妻である。Aは、生前Aの有する財産全部をBに相続させる旨の遺言をしていた。相手方は、令和3年3月Bに対し遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示をした。
原審は、各相続人は特別寄与料について相続分に応じた額を負担するから、遺言により相続分がないものと指定された相続人は特別寄与料を負担せず、このことは遺留分侵害額請求権を行使したとしても左右されないとし、申立てを却下した。
抗告人側は遺言により相続分がないものとされた相続人であっても、遺留分侵害額請求権を行使した場合には、特別寄与料について遺留分に応じた額を負担すべきであると主張。
最高裁判所は、民法1050条5項は、相続人間の公平に配慮しつつ、特別寄与料をめぐる紛争の複雑化、長期化を防止する観点から、明確な基準となる法定相続分等によること解されるので、遺留分侵害額請求権の行使という同項が規定しない事情によって、上記負担割合が法定相続分等から修正されるものではない。よって遺言により相続分がないものとされた相続人は、たとえ遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しないと解するのが相当である、とした。
■参考:最高裁判所|遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しない(令和5年10月26日・第一小法廷)|
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